クソこたつ記事、という表現を初めて目にしました。おお、言い得て妙だな、なんて感心したのは事実です。ただし「クソ」は不要です、便所に流してきてください。
某SNSで見かけた投稿のお話。「100均お役立ち5選!」や「モテる40代の特徴5つ!」といった記事を例に取り「クソこたつ記事」と表現し「執筆者(友人)に幻滅する」という内容でした。「こたつ記事」というのは、取材もせずにネットに転がっている情報をかき集めて執筆する記事のことで、こたつに入ったままでもできるよ!という解釈でおおよそズレはないかと思われます。
さらに、投稿の最後には「そんなに生活が苦しいのだろうか」とのひと言も。こたつ記事を書く人=生活が苦しい?
念のため前置きしますが、投稿内容を叩く記事ではありません。こたつ記事にも様々あって、ライターにも様々な人がいるということを、自分自身がライターになって知りました。そんなことをちらりと書こうと思います。
Contents
まとめ記事で儲かる人とは
NAVERまとめに代表される「キュレーション記事」。ネット上に散らばっている情報やSNS投稿などから必要な情報だけをピックアップしてまとめた記事です。
モノ系ですとamazonのリンクが貼ってあったり、ファッションや雑貨ではinstagramの埋め込み、情報系ではtwitter埋め込みなどを使い、画像を多用して「流し読みでも内容が分かる記事」が多い印象です。
情報源は自分ではなく、他者。まとめただけの記事で「儲かる」人っているのだろうか。
全てがNAVERまとめ形式ではない
NAVERまとめでは、閲覧数に応じた広告収入がライターの懐に入ります。他人の情報をまとめただけのこたつ記事のくせに!と、まとめサイトに懐疑的になる人が大発生しました。が、ちょいと待ってくださいな。全てのまとめサイトがNAVERまとめのような報酬形態ではないのです。
私もいくつかのクライアントの元でキュレーション記事を執筆したことがあります。しかし記事単価や文字単価で報酬を受け取るのみ。アクセス数が多かろうが少なかろうが、インセンティブは受け取っていません。優秀なライターはもらっているのかもしれませんが……あっ、心が傷つく音がした。
ですから、まとめ記事をクリックするとライターが儲かるだけだ!という文言を見かけると「その仕事、私にも紹介してください」って思います(嘘です)。
まとめ記事ライターは儲けてはいけないのか
情報源のチョイスにはセンスが必要です。個人の趣味に走ることはできません。投稿について説明したり、投稿同士をうまくつなげていくのはライターの腕が問われます。「主観は入れないでください」という指定があったりします。「台所では使いにくいと思います」はNGで「こんな場面で役立ちます」はOK。もちろん情報の検索にも、執筆にも時間がかかります。
誰かの役に立つために、時間や労力を使う。世の中に転がっている「仕事」のほとんどに共通しています。ライターの多くは「検索する人の役に立つ記事」を作っています。これは報酬が発生する立派な「仕事」だと思うんです。儲けたっていいんじゃないかな。
ただし「儲ける」という言葉が与える印象がイマイチだし、そもそも「儲かる」ってほどの報酬を受け取るライターさんは、ごく一部ではないでしょうか。
違法な記事は儲けないでおくれ
SNS投稿や引用ばかりを並べ、ライター自身の執筆比率が極端に少ないまとめ記事も存在します。こういった記事を読むと「これで報酬が発生するなんて」と引いてしまいます。最近知ったのですが、引用文章がオリジナル文章の文字数の5割を越えると著作権的にNGらしいのです。1500文字を引用するためには3000文字のオリジナル文章が必要、ということ。近頃はクライアント側が厳しくチェックしています。閲覧者から通報されるケースもあるようです。
転載・コピー記事に報酬が発生したらダメですし、儲けるなんて言語道断。
こたつ記事=まとめ記事ではない
まとめ記事は取材なしで、既存の情報を繋ぎ合わせて執筆できます。確かにこたつに足を突っ込んだまま執筆できます。しかし「こたつ記事」=「まとめ記事」ではないのだと知りました。
取材不要の記事を求めるクライアント
現在私は音楽情報サイトを中心に執筆しています。取材ありきの音楽記事を書きたいのが本音ですが、そういった仕事はなかなか転がっていませんし、まずライターとしての腕が追いつかないでしょう。
今お世話になっているクライアントが求めているのは「取材記事」ではない。それでも私は、リアルなライブ記事があればもっとアクセスが増えるのではないか?とアンケートに書きました。BARKSのように、取材に基づいたライブレポがあるといい、ということ。
しかし、それもどうなんだろうか。わざわざ大手BARKSに競合しにいく必要はあるの?得意分野やBARKSにはない分野に特化して棲み分けすることが、サイト存続やアクセス向上には重要なのかもしれません。
BARKS | アーティストの新曲・動画・ライブ・コンサート情報をお届けする音楽メディア
BARKS(バークス)は、国内外の最新音楽ニュース、アーティストの動画や画像、インタビュー、ライブレポートをお届けする音楽メディアです。
私がクライアントに納品している音楽記事は、取材なしで書けるという点で「こたつ記事」です。ライブ予定やリリース情報も書いたことがあり、ネットから情報を拾って執筆しました。もちろん、引用比率は厳守しています。
こたつ記事を書くにも必死
積極的に書いているのが歌詞考察記事です。曲を聴いて歌詞を読んで、意味を推測して記事にして、紹介するもの。これもこたつ記事です。しかし、情報かき集めのまとめ記事とは異なり、自分の考えを書かねばなりません。作詞者の意図から解釈がズレているかもしれないけれど、私はこう解釈したよ!と説明します。必死です。
読者が「私」ならいいですよ、適当に書いたって「あーなんとなく分かる」で済むから。しかし私ではない読者に私の考えを、言葉にして、分かりやすく伝えるのは簡単ではありません。身振り手振りは使えませんし「分かる?ニュアンスで感じて!」とも言えない。必ず文字にする必要があります。
需要が見えるこたつ記事
この曲はどんなことを歌っているんだろうか。検索した人が歌詞考察の記事を見つければ、需要が満たされます。実際に執筆してみて驚いたんですが、需要は1人や2人ではありません。曲によっては6桁。たとえこたつ記事だとしても、書いてよかったな、と感じます。
SEO対策にとらわれずに執筆できるこたつ記事が好き
SEO対策とは、簡単に書けば「キーワード検索したとき検索上位に表示されるための対策」です。
SEO対策強化のために、「キーワードを本文の◯%挿入してください」「見出しには必ずキーワードを含んでください」といった細かい指定をされることがあります。これ、非常にめんどくさいんです。WEBライターとして仕事をする以上は仕方ないんですけどね。指定の種類も数もクライアントによって異なりますし、気にせず執筆できる場合もあります。
タイトルだけ与えます、あとはご自由に!という記事もあるんですよ。自由度が高く書き甲斐がありますが、責任も感じます。では前者と後者、どちらを積極的に書きたいかと考えると、後者ですね。WEBライター失格ですね、知ってる。
生活苦でこたつ記事を書く人っているの?
こたつ記事を書く人=生活が苦しいのか?という点について。最近は副業を認める会社があるようで、昼間は働きに出て夜は自宅でライターとして働く人もいるのだとか。
こたつ記事を書いてもあまり稼げません
こたつ記事は、PCとネットワークと文章執筆能力と諦めない心があれば誰にでも書けます。自宅から出ずに空調が効いた部屋で(うちにはエアコンがないのですが)うるさい上司もいない空間で会議もなく仕事ができます。だから、というわけではないでしょうけれど、とても低報酬です。
敏腕ライターは知りませんよ!めちゃくちゃ稼いでいると思いますよ!でも大抵のこたつライター、WEBライターは低報酬ではないでしょうか。少なくとも私は低報酬です。
生活苦なら他当たろう
経験者ライターで文字単価が高い人なら、一般的な会社員以上に稼げるようです。執筆スピードがめちゃくちゃ早い上に、仕事依頼が青天井という状況の人も、収入は高いでしょう。そういったスキルがない場合、WEBライターとして生計を立てようとするのは難しいかもしれませんね。生活が苦しいなら最低賃金であっても時給制で働いた方がよほど稼げると思います。
例えば体調不良や子育て、介護などで働きに出るのが難しい人。やむを得ず在宅ワークをするとして「生活のため」となると、かなりの数をこなす必要があります。しかし業務時間の縛りがない在宅ワークですから、隙間時間に少しずつでも執筆を進めていくことができます。主婦の方で、扶養内で少しでも生活の足しにできれば、という働き方にもマッチすると思います。
副業としてもアリですね。ただし、納期厳守が鉄則のライティング業ですから、残業や飲み会など突発的なイベントが挿入されやすい方はご注意を。たとえどんな理由があっても、親が危篤でも、パソコンが壊れても、納期に間に合わないとペナルティを食らう場合があります。
奥深い仕事
数年前に体調を崩して働けなくなったとき、ライターとして拾ってもらったのが始まりでした。昇進で毎月特別報酬がつき単価もアップ、重要な記事を優先的に回してもらえるようになった結果、自分は「読んでもらえる記事」が書けるのだと知りました。
でも昇進や報酬アップについては、クライアントが求めているものと私が提供するものが偶然合致しただけ。どのクライアントと組んでもいつも高報酬!という敏腕ライターではないわけです。
私はこれからもこたつ記事ライターとしてコツコツと執筆を続けていきます。いつか一眼レフを首からさげて取材にも行けるといいですなぁ……。遠くを見すぎていろいろ見失いそうだ。