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以前の記事で、万年筆を死蔵させてしまっているとカミングアウトしました。現在は手元において、毎日のように使っています。

ところで、こちらの記事で「手帳に万年筆を使うと、インクが裏抜けしそうで怖い」ということを書きました。

実際に裏抜けしたわけではなく、「裏抜けしそうで怖い」という食わず嫌いの言い訳です。では、私が使っている手帳と万年筆の相性はどうなんでしょうか。

なお第2段はガラスペンでやりました!

万年筆と紙の相性とは?紙を削っているのか?!

どうして裏抜けするのか調べていたところ、こちらの記事にぶつかりました。

万年筆のインクが裏抜けをするのは「紙を削っている」から?素人が気付かない、万年筆を調整してもらう必要性について | 株式会社ロンド工房公式サイト

万年筆が紙を削っている、なんて考えもしませんでした。 先日行われましたブラウニー手帳ファンミーティング。 話題の中心は使い方とともに、 今年から万年筆に合わせて改良した紙について。 概ねご好評を頂いたのですが、 その中で…

万年筆で紙を削っているのではないか、と書かれています。確かに、筆記の手応えとして「スラスラ」するものと「カリカリ」するものがあるんです。

「カリカリ」する方は、紙の繊維がペン先に入ってしまうような妄想に駆られるぐらい「削っている感」が半端ありません。

もし紙を削ってしまっているのなら紙の厚みが減りますし、インクが抜けやすくなりますよね。

紙によって削れないものもある?

セーラーのハイエースネオという万年筆を所有しています。こちら、かなり「カリカリ」系万年筆です。しかし、紙によってはカリカリしないものもありました。削れやすい紙質っていうのがあるんでしょうね。

心地よい「カリカリ」もあって、私が使っている縦書き日記帳はハイエースネオとの相性が良く、「カリカリ」しすぎず「スルスルヌラヌラ」と滑ってしまうことがありません。

インクの質にもよるのでは?

万年筆のインクは主に顔料インクと染料インクの2種類があります。

様々な色のインクを作りやすいのが染料インクですが、水に弱いのが弱点です。そして染料インクは「裏抜けしやすい」と言われています。ようは、染み込みやすいってことでしょうね。

一方の顔料インクですが、万年筆のメンテナンスを怠ると詰まりやすいそうです。インク自体に微細な粒子が溶けてるからですね。しかし反面、裏抜けしにくいと言われます。

かの有名な「何でもかんでも裏抜けするモレスキン」の紙、顔料インクなら裏抜けしないそうですよ。

どこに的を絞ればいいのか分からなくなってきた

裏抜けの検証をするにあたっては、いろいろな要素を加味しなければなりません。

  • 万年筆
  • 万年筆のペン先の細さ
  • インクの質
  • インクの色の濃さ
  • 紙質

所有している万年筆が数本、インクはそれぞれ異なるものを入れています。紙質のみで比較、ペン先のみで比較、などといった偏りのない検証はちょっと難しそうですね。

ひとまず、今使用している万年筆と、そこに入れているインクのセットで、持っているノートやメモに片っ端から字を書いて、裏抜けするかどうか検証してみることにしました。

いざ万年筆裏抜け検証

今回エントリーした用紙は以下のとおりです。万年筆とインクはそれぞれの検証画像に記載しています。

  • ロディアのメモ帳 7.5x12cm
  • モレスキン ノート 方眼
  • MIDORI MDノートブック 無地
  • アピカ 紳士のノート B7ハードカバー方眼
  • LIFE ノーブルリフィル ミニ6穴

それでは、字が汚いことには目を瞑ってもらい、いざ検証です!

ロディアのメモ帳 7.5x12cm

オレンジ色が目印のRHODIA。現在は黒もありますね。横開きのものもあれば縦開きのノートやメモも充実。

罫線は紺〜紫っぽいが比較的濃くはっきりしている印象です。
では比較してみます。


PILOTの色彩雫シリーズは1「冬柿」と6「天色」の2色を使用しましたが、1「冬柿」のみ少し抜けていますね。

また、文具館コバヤシのオリジナルインクも3「翡翠」と4「藤枝」を使用しましたが、5「藤枝」のほうが抜けが強いです。

1「冬柿」についてはカリカリ系万年筆ハイエースネオとの組み合わせですので、紙を削っている可能性はあります。HERO(中国のメーカー)の万年筆はペン先はめちゃくちゃ細いのですが、さほどカリカリしませんので。

5「藤枝」の万年筆は雑誌の付録で、私が好まない太めのペン先です。ですからカリカリ感はほとんどないのですが、裏抜けしていますね。

3「翡翠」の万年筆はLAMY safari。ペン先はEF(極細)で、紙質によってはカリカリします。ロディアの紙は割と繊維感があるので、削っているかもしれませんが、2「ONLINE」は抜けませんね。

検証結果は以下の通り。「不」は抜けてしまったもの、「可」は許容範囲、「良」は抜けなかったものとします。

ロディアのメモ帳 7.5x12cm
  • 「不」冬柿xハイエースネオ
  • 「良」ONLINE royal bluexLAMY safari
  • 「可」翡翠xLAMY safari
  • 「不」藤枝xAfternoonTea
  • 「良」ZABRA fuente 黒
  • 「良」天色xHERO

モレスキン ノート 方眼

万年筆ユーザーの鬼門、漏れスキンことモレスキンです。ポケットサイズのソフトカバー、方眼タイプを使用しています。

一般的なボールペンでは非常に書きやすい用紙だと思います。
では比較してみます。



ほとんど漏れスキンな結果です。唯一、裏抜けしていないと言ってあげられるのは2「ONLINE」ですね。

ONLINEのroyal blueは非常に発色が弱いインクでして、そのせいもあるかもしれません。ONLINEの別のインクであれば、裏抜けしそうな予感。

検証結果は以下の通り。「不」は抜けてしまったもの、「可」は許容範囲、「良」は抜けなかったものとします。

モレスキン ノート 方眼
  • 「不」冬柿xハイエースネオ
  • 「可or良」ONLINE royal bluexLAMY safari
  • 「不」翡翠xLAMY safari
  • 「不」ZABRA fuente 黒
  • 「不」藤枝xAfternoonTea
  • 「不」天色xHERO

MIDORI MDノートブック 無地

画像は方眼ですが、私は無地を使っています。

MIDORIのMDノートは、万年筆ユーザーから評価が高いノートかと思います。友人が誕生日にプレゼントしてくれまして、小説のメモに使っておくれとのことで、万年筆でガンガン書いています。

どの万年筆を使ってもなめらかな書き味なのが魅力です。「カリカリ」が殆どありません。
では比較してみます。



Excellent!!私が悪の教典の蓮実聖司先生だったら間違いなく「Excellent!!」って叫んでますね。

裏抜けゼロです。裏抜けゼロ運動です。素晴らしい。書き味が良くて裏抜けがしない、つまり削れにくい紙なのかもしれませんね。本当にオススメの紙質です。

検証結果は以下の通り。「不」は抜けてしまったもの、「可」は許容範囲、「良」は抜けなかったものとします。

MIDORI MDノートブック 無地
  • 「良」冬柿xハイエースネオ
  • 「良」ONLINE royal bluexLAMY safari
  • 「良」翡翠xLAMY safari
  • 「良」藤枝xAfternoonTea
  • 「良」ZABRA fuente 黒
  • 「良」天色xHERO

アピカ 紳士のノート B7ハードカバー方眼

これさあ、B7より少し小さくない?って思ったんですけど勘違いでしょうか?

それはさておき、私が手帳として使っているのがこちらのノート。灰色系の方眼ですが、あまり主張しすぎない感じがあります。万年筆での書き味はなかなかのもの。

それでは比較してみます。



んんんん!!コレは非常に微妙です。間違いなく裏抜けしているのは1「冬柿」と4「藤枝」ですね。3「翡翠」もアウトかな。

2「ONLINE」、4「fuente」、6「天色」は、画像として見ればセーフに感じますが、実際は地味に裏抜けしています。インクフロー絶好調な万年筆だったりすれば抜けると思います。かの2「ONLINE」ですら抜けていますね。

が、現在このノートにを手帳として使用して、万年筆で記入しています。そんなに気にならないです。筆圧とか、もろもろの条件にもよるのでしょうか。

3「翡翠」はここではアウトですが、この程度のアウトなら使用に支障はありませんね。

検証結果は以下の通り。「不」は抜けてしまったもの、「可」は許容範囲、「良」は抜けなかったものとします。

アピカ 紳士のノート B7ハードカバー方眼
  • 「不」冬柿xハイエースネオ
  • 「可」ONLINE royal bluexLAMY safari
  • 「不」翡翠xLAMY safari
  • 「不」藤枝xAfternoonTea
  • 「可」ZABRA fuente 黒
  • 「可」天色xHERO

LIFE ノーブルリフィル ミニ6穴 無地

こちらの画像は方眼ですが、手持ちは無地です。ミニ6穴のリフィルを自作しようと思って購入しました。
予想以上に厚みがあってしっかりとした紙です。インクジェットプリンターで印刷してみましたが、裏から透けて見えるようなことはありませんでした。
では比較してみます。



書き間違えても直さないクズさ加減。まあいいや。

こちらも素晴らしい!蓮実先生出てきたよ、Excellent!!全然裏抜けしませんね。

万年筆でシステム手帳を使うなら、LIFEのリフィルがいいですなあ。かの有名なノーブルノートの用紙ですので、信頼できます。

検証結果は以下の通り。「不」は抜けてしまったもの、「可」は許容範囲、「良」は抜けなかったものとします。

LIFE ノーブルリフィル ミニ6穴 無地
  • 「良」冬柿xハイエースネオ
  • 「良」ONLINE royal bluexLAMY safari
  • 「良」翡翠xLAMY safari
  • 「良」藤枝xAfternoonTea
  • 「良」ZABRA fuente 黒
  • 「良」天色xHERO

総評

用紙として強かったのは、MIDORIのMDノートとLIFEのノーブルリフィルですね。ノーブルリフィルは紙に厚みがあるので、抜けにくいのかもしれません。

MDノートはペラペラではないけれど、ノーブルリフィルほどの厚みはありません。それなのに私の手持ち万年筆セット全てが裏抜けしないっていうのは、素晴らしい。

モレスキンは大方の予想を裏切らない抜けっぷりでしたが、ボールペン筆記では本当に使いやすいので、誤解なきよう。

同一メーカーのインクでも、色素の濃度で抜けやすさに違いはあるのでしょうね。1「冬柿」は抜けやすい方だと思います。今回検証した以外の用紙で考えてみても、かなり抜けます。

しかし発色はとても綺麗です。PILOTの色彩雫は本当に発色が良くて、インク沼の住人を引き込みやすいミニボトルもあるので恐ろしいですね。PILOTあざとい。

あとは書き方の癖も関係すると思います。とめはねを気にしながら筆記する方は、インク溜まりができやすいですので、裏抜けしやすくなりますね。筆圧が強い方も同じく。

裏抜けしたって構わないメモのそばには抜けやすい万年筆・インクを置いて、手帳には検証結果で抜けにくいと判断された万年筆・インクセットを持ち歩いて、小説のメモノートは気分が上がる万年筆・インクセットを挟み込んでいけばいい。

裏抜けするセットだって、活躍の場はあるということです。

最近かなり万年筆を使っています。仕事用のノートも、色なんて気にしないでバラバラに書き込んでいますし、「冬柿」は裏抜けの前に「にじむ」んですがそれでも赤いペンが必要で、冬柿を使っています。

やっぱりね、気分で使い分けられるのは楽しい。沢山欲しくなる。何がって、万年筆とインクです。いくつあっても足りない。立派な「沼」の住人になったなあと思います。

第2弾はガラスペンでやっています↓↓↓

S.Nakayama

一帖半執筆工房代表。 WEBコンサル・マーケ企業のフリーランスPMとして計9サイトの運営を指揮。DigitalCameraWorldの認定フォトグラファー。 現在は2社5メディアの進行管理をしながら文章校閲・校正者・ライターとしても活動中。