「大手企業がNotionで○○管理」がニュースになる昨今、古から伝わる表計算ツール「スプレッドシート」からNotionへの移行を考える人がたくさんいるはず。
All-in-Oneのメモアプリを求めるならNotionがベストです。しかしデータベースの扱いやすさを求めてNotionに移行するのは、うーん。どうでしょうか。
スプレッドシート派で、データベース管理のしやすさ・見た目のバリエーションを求めるなら断然AppSheetをオススメします。
「データベースが管理しやすい・ビューのバリエーションが豊富」に惹かれてNotionに移行した私は、単純なデータベースをスプレッドシートに戻し、AppSheetに流し込みました。
なぜNotionを捨ててスプレッドシートに戻したのか。スプレッドシート派にAppSheetをオススメするのはなぜか。
実際に使ってみて感じたことを書いてみます。
こんな人の役に立つかも
NotionとAppSheetのどちらを選ぶかで5万年悩んでいる人。Notionデータベースに何となくモヤモヤしているスプレッドシートユーザー。
Contents
Notionデータベースの私的イマイチポイント
1年前にあらゆる業務データをNotionに移行して快適に使用していたんですが、徐々にモヤモヤが増殖していきました。
- 動きが重い・読み込みが遅い
- 関数がややこしい
- リレーションが把握しきれない
- 見た目がすこぶる地味
- リマインダーが弱い
それぞれ突っ込んでみます。
動きが重い・読み込みが遅い
製品スペックをまとめたデータベース(関数なし)の動きがちょっと鈍いな〜と思いながら使い続けていたんですが、その鈍さが無視できないレベルになったのが半年ほど前。
スプレッドシート回帰が頭を過ったキッカケはコレでした。
まず読み込みが遅い。「さらに読み込む」に到達した時の読み込みがかなり遅い。セルをクリックしてから入力可能になるまでラグがある。そんでもってスクロールに対してデータが遅れて付いてくる。もはや「いっこく堂」状態。
データ数は250行ぐらいで、セルに換算すると6,000以上ですね。
ちなみにスプレッドシートのセル上限は1,000万なので、6,000セルなんて誤差ッス。地球の歴史に対する人類の歴史みたいなもんッス。
関数がややこしい・リレーションが把握しきれない
Notionのデータベースでは関数が使えるし、扱える関数の種類も増えてアップデートもされている。そのため利便性は向上しているんですが、問題は「数式が見にくい」コトなんですよね〜。以下はNotion公式サイトから引用した関数です。
let(
——引用元:関数2.0: Notion関数の改良点と新機能、および既存環境への影響|Notion
進捗率,
prop(“タスク”).map(current.prop(“ステータス”)).filter(current == “完了”).length()
/ prop(“タスク”).map(current.prop(“ステータス”)).length() * 100),
/* ここに残りの関数を記述します */
)。
プロパティを日本語で指定できてわかりやすいんですが、プロパティ名を必ず「prop()」で囲まないといけない。引用した数式はそれほど長くありません。だけど数式が長くなるとpropが増殖して、何が何だかわからなくなります。
また数式にエラーがある状態で保存はおろか、数式の入力ボックスを閉じることもできません。これは結構ストレスでした。
Notion関数をより便利にする「リレーション」については別途記事を書いています。便利だからと多用しすぎた結果、何が何だかわからなくなりました。
2023年9月28日にNotionの関数が2.0にアップデート。既存の数式を開くと「prop」記述が消えていました。 ただし関数を設定する時はやっぱり「prop」が必要っぽいですね。
またリレーションとセットで使っていた「ロールアップ」が不要になったとか。これで多少デメリットが減ったかもしれません。
知らんけど。
見た目がすこぶる地味・リマインダーが弱い
Notionデータベースの中でも特にテーブルビューは見た目がすこぶる地味。
見出しは白背景で文字色はグレー。差し色が欲しければ見出しの頭に絵文字をつけるしかない。せめて見出し行だけも色付けできるようにしてほしかったです。
トグルなどの格納系ブロックに背景色を付けて、インライン化したデータベースをつっこめばテーブル全体に背景色が付きます。でも「見出しだけ」「特定の列だけ」はできません。
最後にリマインダーですね。
Notionでは日付にリマインダーがセットできます。ただし設定パターンは4種類のみ。スプレッドシートはデフォルトのリマインダー(条件付き書式)が豊富ですし、カスタム数式を使えばあらゆるリマインドが可能です。
「動きが悪いストレス」を発端にして、いちいちスプレッドシートと比較し始めちゃったんですよね……。
スプレッドシート派にAppSheetがオススメの理由
スプレッドシート派でデータベースを使いやすく&見た目を変えたい人にはAppSheetがオススメです。
新しいツールを使う時に必要な「データ移行」が圧倒的にラク、というか「移行」の概念が不要。
- スプシからNotion:データをオフラインに取り出してNotionに格納
- スプシからAppSheet:データをAppSheetにオンラインで読ませる
ざっくり書くと上の図のようになります。AppSheetならエクスポート・インポート作業が不要、手間がめちゃくちゃ減るんですよ。
平野レミのレシピぐらいシンプルかつ乱暴。
スプレッドシートからNotionに移行する場合
スプレッドシートからNotionにデータベースを移行する場合、本格始動までのフローを書き出してみます。
- スプレッドシートのデータをCSVで取り出す(エクスポート)
→この時点でデータの「時間」が止まる - CSVをNotionに突っ込む(インポート)
- スプシの関数をNotion関数で再現する
- 関数や見た目が整ったら最新データをNotionに反映させる
CSV出力によってスプレッドシートのデータから切り離され、データの時間が止まります。これをNotionに取り込んでNotionを整備している間、新しいデータをどうするか問題が生じます。
新しいデータはスプシで管理しつつNotionを整えて、最新データをインポートし直すか。Notionを整備しながら新データをNotionに追加していくか。念のためスプシ・Notion両方に追加していくか。
やり方はいろいろあるにせよ、スプレッドシートから取り出したデータは時間が止まるってことは考慮しないといけません。
スプレッドシートからAppSheetに移行する場合
スプレッドシートからAppSheetに「移行」する、って表現が既におかしい。そもそも「移行」ではありません。
- AppSheetとスプレッドシートを連携(connect)
- AppSheetの見た目を整える
これだけ。つまりAppSheetは、スプレッドシートのデータの「切り口を変える」ツールであって、データそのものは紛れもないスプレッドシートに置いてあるわけです。
最新データはスプレッドシートかAppSheetのいずれかに追加すれば双方に反映されるます。
スプレッドシートで長ったらしい関数を使っていても、AppSheetの関数に置換する必要はありません。計算はスプシに任せてAppSheetは「表示」に徹してもらえばOK。もちろんAppSheetの関数を使うっていう選択肢もあります。
お手元のスプレッドシートで大量のデータを管理しているなら、Notionに移行する前にAppSheetを試してみてもよいのではないでしょうか〜。
上記は「もともとスプレッドシートでデータを管理している場合」です。
他にも連携できるツールがあるようですし、AppSheetからダイレクトにデータベースを作ることも可能。
使ってみて感じたAppSheetの良い点・悪い点
スプレッドシートのデータをAppSheetに連携すれば、「見た目」をテーブル以外に変えられます。
といってもやっぱりテーブル(表)形式はマストですね。一画面から得られる情報量が圧倒的に多いので、テーブルは外せません。
「だったらスプレッドシートでいいじゃん、AppSheetじゃなくてもいいじゃん」
……って、思うじゃん?米屋陽介もそう思うじゃん?(WTネタ)
スプレッドシートにはないAppSheetの利点やAppSheetの弱み、もろもろ含めた所感を書きますよ〜。
- 【○】スプシと差別化する「ディテール・フォーム」
- 【○】ディテールとフォームが自動生成
- 【×】テーブルから直接書き込みできない
- 【○】スプレッドシート・AppSheetどちらでも作業できる
- 【×】日本語非対応
- 【×】自動連番が振れない?
【○】スプシと差別化する「ディテール・フォーム」
スプレッドシートはテーブル形式なので、1レコードが横方向に展開しています。たとえばプロフィールを管理する場合、縦方向に個人名を追加して、右方向に日付・学校名・誕生日……のように項目を並べていくのが通例です。
項目が増えると横スクロールが発生します。横スクロール、嫌われる要素っすよね。また「○○さんのデータだけ見たい」って時にスプレッドシートのテーブルは圧倒的に不便です。
コレを解決するのがAppSheetの「detail」と「form」。
- ディテール:1レコードをまとめて表示
- フォーム:1レコードのデータを縦方向に入力できる
天才では!?
データをクリックすると、1レコード分のデータが1セットで表示されます。こいつが「ディテール」形式。項目が増えても横スクロールは不要です。
フォームはその名のとおり入力フォーム。縦方向に入力できるし、入力する行を間違えた! みたいなことが発生しにくいですね。項目数が少ないデータベースなら一画面に収まります。
もしもスプレッドシートでフォームを作るとなると、Googleフォームを使うかアドオンを入れるか……でしょうか。
【○】ディテールとフォームが自動生成
しかもね、何がスゴいってディテールもフォームも「標準装備」プラス自分でも設定できるんすよ。
コダワリがなければ、とりあえずシステムが自動生成したディテール・フォームを使えば問題ナシです。
スプレッドシートの元データがプルダウンならフォームもプルダウンにしてくれるし、日付はカレンダー入力にしてくれるし、とにかく頭がいい。
表示順や入力順にこだわるなら「Views」で独自設定可能です。この場合、何らかのデータと紐付けて作成します。
ex)「今月誕生日の人」だけを集めたデータ(スライスと呼ぶ)専用のフォームを作成し、「購入プしたレゼント」「渡した・渡していない」がサクッと入力できるように設定。
新規データを追加する時と既存データを編集する時、どちらも入力作業ですが、より作業しやすい入力順に変えられるってワケです。このあたり、スプレッドシートだけでなくNotionの上を行くかもしれない。
【×】テーブルから直接書き込みできない
AppSheetのディテール画面から「edit」をクリックするとデータが編集できます。
しかしNotionやスプレッドシートでフツーにできる「テーブル上でデータ編集」ができません。テーブル内の1セルをクリックすると、ディテール or 編集画面が開いてしまいます。
ここがちょっと不満っちゃー不満かな。「このプルダウンだけ変更したい」の場面でもわざわざ1レコード開いて編集する必要があります。
うっかりクリック・うっかり削除・うっかり編集が避けられると考えれば、メリットにもなり得ますけどね。
【○】スプレッドシート・AppSheetどちらでも作業できる
誰かから受け取った大量のデータを入力するなら、コピペでスプシに移すのが早いっす。AppSheetは多分コピペできないから。でもデータを個別に処理するならAppSheetでしょうね。
スプレッドシートの関数に慣れている人はAppSheetの関数を無理して使わず、スプレッドシートで関数をいじる。
こんなふうに、慣れた方法・安全な方法で大量のデータがさばける点を高く評価しています。
AppSheetの関数はスプレッドシート+Notionという使用感でした。関数そのものは難しくないんですが、それがどこにどうやって適用されるのか、わかりにくかったです。その理由は次に書きます。
【×】日本語非対応
2023年10月時点でAppSheetは「日本語入力」「日本語を交えた関数記述」には対応していますが、説明もろもろすべて日本語非対応です。そのため、関数の説明・解説も細かい機能もすべて(私の設定では)英語で書いてあります。
難しい設定を使うならここが「ハードル」になるかもしれませんね。私の場合、英語翻訳するの面倒くさいからスプレッドシートで処理しておこうとか、何となく操作したらうまくいったとか、そのレベルでどうにかなっています。
AppSheetで複雑な関数を動かしたり自動化(Automation)したりするなら、英語を読みましょう(投げ)。
【×】自動連番が振れない?
細かい説明は長くなるのでやめておきますが、新しいレコードを作成する時に自動連番が振れない・振りにくいです。ランダムなIDは振れるんですが、それだと「データを追加した順」に並べ替えるのが難しいので、追加順にIDを振りたい。
AppSheetは「キー」(IDみたいなもの)を要求します。これが連番になればいいのにって思うんですが、何だかコイツの制約がきつくうまくいきません。
そのため、新しいレコードを立ち上げたら自動で連番が「表示」され、それをキーとして手入力、みたいなことをやっています。このあたり、記事にできたらいいなあ。
AppSheetはデータ管理特化&スプレッドシート派にオススメ
AppSheetを楽しく便利に使っています。特にアラート・リマインダーは捨てられなかったなあ。Notionでは実現できない複雑なアラートが設定できるだけでも、私にとってかなり価値が高いツールです。
「人」や「お金」の管理をしていると、伝え忘れ・支払い忘れがクリティカルな失態。それを未然に防ぐためにアラートを便利に使っています。
「AppSheetはローコード・ノーコードでアプリが作れる」ってのはその通りで、使いやすいスマホアプリが作れます。仕事中はPCで、時間外はスマホで。
ワーカホリック一直線っすね!
ただしノーコード・ローコードのAppSheet=誰でも思い通りのアプリが作れる、ではないと思っています。「コダワリのAppSheet」を作るにはスプレッドシートの性質や関数の基本ぐらいは知っておかないと手が止まる気がしますね。
少なくとも、以前ちょっと使ってみたローコードツール「Glide」よりはわかりやすかったですが。
ビギナーがあれこれ調べてたどり着いたAppSheetの楽しい使い方や、カンバンボードの作り方など、今後まとめていきまーす!