三度の飯より紙細工が大好きな私(@saosaoyamayama)です。
ここ数週間、せっせと定規を当ててカッターで切ってあれやこれや……とやっていまして、その中でふと思ったんです。
私はなぜプリンターと仲良くなれないのか、と。
仲良くなるためには、相手を知ることから始めるのが定石。ということで、よくわからないまま何となく使っている印刷設定に白黒付けることにしました。
私と同じように、プリンターと精神的距離を取って過ごしている方のお役に立てると嬉しいです。
なお文字数の関係で、フチなし印刷についてはご紹介しませんが、検証は済んでいます。
※本記事はPRを含みます。
Contents
プリンター印刷設定に白黒付けたい理由
なぜ印刷設定を突き詰めたくなったのかというと、自作プロダクトに対する愛着を増量したいからです。
自作プロダクトは、当然ながら市販品のクオリティには及びません。
でも、たとえば革製品って使用するうちに伸びたり色が落ちたりして、自作だとしてもアラが目立たなくなるんです。それゆえ、アラだらけの自作ミニ財布を7年も使い続けています。
しかし紙プロダクト(自作手帳とかね)は、とにかくアラが目に付く。時間が経っても用紙が水平垂直を手放すことはなく、ちょっと曲がった直線はいつまで経ってもズレたままです。もちろん印刷の質も低い。直線ひとつとっても、自宅で印刷したことが丸わかりのザラザラ直線なのが辛いところ。
手帳のような紙プロダクトの自作において、自宅のプリンターは主役であり、クオリティの決め手でもあるわけです。
では、印刷がガン決まりのプロダクトと杜撰なプロダクト、愛着が湧くのはどちらでしょうか。
「見て! まるで東急ハンズで平積みされている手帳のように美しい!」って思える自作手帳なら、愛着100%に達するはずです。逆に自分で作った感100%のプロダクトは、自分で作った感と反比例して愛着が下がります。
万が一誰かに「手帳を譲ってほしい」と言われた時、臆せずお出しできるクオリティ、人前で使っても恥ずかしくないクオリティに仕上げたい。そんな思いから、まずは思いどおりのサイズ・想定したポジションに印刷できるよう、プリンターの原稿と用紙の関係性を検証することにしました。
プリンター印刷設定に白黒付けるためにやったこと
今回使用したプリンターは、EPSONのカラリオ EP-881AWです。
初期はCanonを使っていましたが、直近3機種はEPSONですね〜。他社プリンターや他モデルとは設定項目や名称が異なると思うので、参考程度にご覧くださいませ。
EP-881AWには印刷できない領域が存在します。具体的には四辺から3mm内側までです。これをプリンターのデフォルト余白と呼ぶことにします。
また検証にはA5サイズの用紙を使用し、テスト画像はcanvaで作成しました。canvaでは線や四角などの図形の配置を、cmやmmで指定できます。デフォルト余白を考慮して画像を作る時にめちゃくちゃオススメです。
印刷設定3パターンを検証
EP-881AWの印刷サイズ設定は以下の3パターンです(カッコ内は設定名称と選択項目)。
- 画像全体印刷(用紙サイズに合わせる:画像全体をプリント)
- 用紙全体印刷(用紙サイズに合わせる:用紙全体を埋める)
- 100%印刷(サイズ調整:100%)
テスト画像として以下の画像を作りました。

上下左右に3mmの余白を設けています。画像がまるっと印刷できた場合、画像上の余白線は用紙の端から6mmに位置することになります。
デフォ余白エリアにはみ出している線や図形(例:青い四角)が印刷されるか・されないか、に注目しました。
また四隅の正方形は3cm角です。これが3cmのまま印刷されるかどうかも確認しました。
この画像を3つの条件で印刷し、スキャナで取り込みました。ただ、どうしてもズレが生じてしまうので、印刷プレビューも併せて掲載します。
画像全体印刷

こちらはEP-881AWの印刷設定画面です。画像全体印刷では画像を印刷範囲に収めるために4%縮小がかかり、96%で印刷されます。


1枚目が印刷プレビュー、2枚目は実際に印刷した結果です。
- 画像位置合わせ:印刷可能範囲に画像全体が収まるように縮小
- 印刷の欠け:なし
- 余計な隙間:あり(短辺)
正方形のサイズを測ってみたところ、約2.88cm四方に縮小されていました。また、画像上の図形や線は一切欠けなく印刷できましたが、短辺には微妙な隙間が生じています。
拡大(や縮小)で短辺・長辺に差が出てしまうのは長方形の宿命……。A5の画像を少しずつ縮小していくと、余白3mm線を最初に通過するのは短辺です。その次に長辺が通過します。
長辺が通過するタイミングで縮小を止めるのが「画像全体印刷」なので、先に入った短辺に隙間ができてしまうわけですね〜。
画像全体印刷
A5で作った画像全体が欠けることなく印刷できるが、短辺に隙間ができる。また実寸で印刷できず縮小される。
用紙全体印刷

用紙全体印刷でも画像を印刷範囲に収めるために縮小がかかり、原寸の97%で印刷されました。


印刷結果は以下のとおりです。
- 画像位置合わせ:印刷可能範囲内に隙間ができないように縮小
- 印刷の欠け:あり(長辺)
- 余計な隙間:なし
3cm四方で作った正方形のうち、オレンジのものは約2.9cm四方で欠けはありません。一方、青い正方形は約2.9cm×2.85cmで、正方形を保っていません。
つまり長辺側が0.5mmほど欠けるので、長辺ギリギリに文字やイラストを配置するとマズいことになります。
用紙全体印刷のイメージとしては、画像全体印刷で生じた短辺の隙間を埋めるために少し拡大したもの、と捉えるとよさそうです。
用紙全体印刷
隙間はできないが、長辺が欠ける。また実寸で印刷できず縮小される。
100%印刷


100%印刷では、画像が原寸で印刷できます。オレンジの正方形を測定したところ、3cm四方でした。また青い正方形は印刷されないデフォ余白分の3mmが欠けて、2.7cm四方でした。
- 画像位置合わせ:用紙に対して100%倍率(デフォルト余白は無視)
- 印刷の欠け:あり(四辺)
- 余計な隙間:なし
テスト画像の余白線は4本とも綺麗に印刷されており、画像上の余白とプリンターのデフォ余白がピッタリ重なっていることがわかります。ここまで綺麗にキマるとは思わなかったぞ……。
100%印刷
プリンターのデフォルト余白を考慮して画像を作成すれば、隙間・欠けなく実寸印刷可能。
サイズ変更しやすい画像全体印刷・実寸可能な100%印刷
ここまでの結果を踏まえ、A5の画像印刷を綺麗に仕上げるにはどうしたらいいのか考えてみました。
- 実寸で印刷したい:100%印刷
- 用紙サイズ変更の可能性がある:画像全体印刷
この2つかなと思っています。ただし、いずれにしても綺麗に印刷するためには条件があります。
100%印刷ならデフォルト余白を考慮して画像を作成

実寸で印刷したければ100%印刷です。ただし用紙の四辺3mmを考慮して原稿を作る必要があります。
上の画像のように四辺から3mmのところに余白線を引き、その内側を使ってデザインすれば、欠けも隙間もなく印刷できるはず!
canvaでは配置した要素がロックできます。余白線を配置してロックしておけば作業中に触れてもズレません。めちゃくちゃオススメ。
余白線の内側でデザインする、と書きましたが、あえて外側にはみ出させて綺麗にカットしてもらうってのもアリだと思います。
余白考慮100%印刷の注意点
注意点は、用紙サイズが変更できないこと! 変更するなら画像を作り直さないといけません。
たとえばA5の画像をA4に引き伸ばすと、印刷倍率は141.4%です。じゃあシンプルに141.4%で印刷すればいいかっつーと、それはNG。

A5の画像を141.1%拡大でプレビューしてみました。
プリンタデフォ余白<画像上の余白
こうなっちゃうんですね。両者の余白線はピッタリ重ならず、画像上の余白が3mmよりも広くなってしまいます。
逆に、用紙サイズを小さくすれば画像上の余白が3mm以下になり、画像が欠けます。
そのため、用紙サイズを変更するなら画像を作り直すか、拡大倍率を絶妙なさじ加減に調整する必要がありそうです。
画像サイズをカスタムして画像全体印刷すればサイズ変更に対応できる
画像全体印刷のメリットは、プリンターが「イイ感じ」に印刷してくれる点です。原寸印刷は犠牲になりますが、どんな用紙サイズ・画像サイズでも欠けが生じない位置取りで印刷してくれます。
しかし長方形の宿命で、どうしても長辺 or 短辺に隙間ができるんですよね。隙間も欠けも出さずに、用紙サイズ変更にも対応できる画像を作るにはどうするか。
印刷可能サイズで画像を作れば解決します。

印刷可能サイズは、用紙サイズ(A5用紙は21cm×14.8cm)からプリンターのデフォルト余白(上下左右3mm)を引いたサイズです。
(21cm-0.6cm)×(14.8cm-0.6cm)
印刷可能サイズは20.4cm×14.2cm。画像内の余白線の内側ですね。このサイズで画像を作りましょう。画像上に余白を設ける必要はありません。

印刷可能エリアを黄色で塗りつぶして印刷プレビューしてみました。大外の太い黒い線(余白線)より外に何もはみ出していません。もちろん欠けてもいません。
用紙の中央に印刷すれば綺麗に収まるし、これなら原寸で印刷できるんです! しかも画像上で余白を気にする必要ナシ。すばらしい。
「このサイズで画像を作ろう」と書きましたが、重要なのはサイズではなく縦横比です。
A5用紙の縦横比と、黄色で塗った印刷可能エリアの縦横比は微妙に異なります。画像/用紙全体印刷で長辺・短辺に差が出るのはコレが原因です。
黄色エリアの画像を拡大すると、画像上の要素の「サイズ」が拡大されて原寸ではなくなりますが、縦横比は保たれます。
- 印刷可能エリアの縦横比で画像を作る
- 画像全体印刷を指定して印刷
このようにすれば、用紙サイズの縦横比が保たれている(A4→A5→A6などなど)限り、欠けも隙間もなくバシっと印刷できるし、画像上に余白線を引く必要もありません。
印刷可能範囲サイズの画像制作の注意点
注意点は、印刷可能範囲の計算を間違えないこと! これに尽きます。
canvaの無料版では、最初に設定したキャンバスサイズを後で変更できません。新しいキャンバスを立ち上げて、画像内の要素をせっせとコピペするハメになります。
用紙そのものが持つ誤差をどうするか

市販されている文庫本はページ数(用紙枚数)が多いにもかかわらず、用紙がピシーっと揃っています。これは用紙そのものが初めから揃っているわけではなく、製本した後で不揃い部分をカットしているからなんですね。
「紙」そのものを寸分の狂いなく切り出すのって難しいようです。そのため、印刷設定や余白を気にしながら画像を作っても、用紙キッカケのズレが邪魔する可能性は大いにあります。
この場合、用紙と印刷物の水平垂直が合うように用紙を切って調整すれば、結構綺麗に仕上がるのではないでしょうか。
とはいえ……カッターで用紙を切るのも、まぁズレますよね。試しにスライドカッターを使ってみたのですが、切断面が潰れてしまうのと、切りたい直線上を狙って切るのは難しかったです。
でもね、片面印刷で用紙と画像が大きくズレるとしたらそれは用紙のせいではなく、プリンターがポンコツか、用紙のセットの仕方が原因のはず。これは解決できます。
問題は両面印刷です。
たとえば手帳紙面を両面印刷すると、用紙ズレによって裏表の罫線がズレて頭を抱える事態に……。
そんで、手動両面と自動両面で同じ画像を印刷して確認してみた結果、自動両面のほうが圧倒的に綺麗です。裏表の罫線のズレはほんのわずか!
EP-881AWはA5の自動両面印刷に対応していないので、A4で印刷して自分で切断することにはなりますが、表裏不一致に比べたらカッターのズレなんて毛ほども怖くありません。